1月 某日 バッハ・ツィクルス

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高校の後輩の福田ひかりさんのバッハ・ツィクルスに行く。
ツィクルス…連続演奏会も三回目とのこと、今回やっと聴きに行けた。
今回はプログラムの見てどうしても行きたかったのだ。

副題が「フーガに魅せられて」とあるとおり、バッハの「平均律」が演目に上がっている。
私にとってバッハの平均律クラヴィーア曲集というとグレン・グールドでしか聴いたことがなく、
かねてからグールド以外のスタンダードな演奏を聴きたかったのだ(笑)
そして、今回のプログラムで目を引いたのがショスタコー ヴィチの「24の前奏曲とフーガ」が
演目に入っているということ。
ショスタコのピアノ曲なんてそうそう聴く機会はない。

そして第二部はベートーベンの後期ピアノソナタの31番。
最後が再びバッハの「半音階的幻想曲とフーガ」という実に通好みの選曲になっている。
この田舎町でショパンもシューマンもないプログラムを組むという勇気に私は心の中で先ず拍手を送った。

ピアノは初めて耳にするベヒシュタイン。
スタンウェイをクールに弾きこなすグールドを聴き慣れた耳には、
ホール演奏らしい多少茫洋とした音色に戸惑いもあったがこれもスタンダードか?(苦笑)
とても柔らかな音色にホールがいっぺんに華やぐ。

そして面白かったのは、バッハとショスタコの「前奏曲とフーガ」から三つ調性を三曲ずつ選んで
交互に演奏するという試み。
こういう演奏例があるのだろうか?
ショスタコがバッハの平均律に触発されて作曲されたこの曲は正に現代の平均律ということか。

バッハの前奏曲→フーガ→ショスタコの前奏曲→フーガ。これが3クール。
始めは順番を意識して聴いているのだがバッハもショスタコも次第に渾然一体となって
一つの変奏曲のように聴こえて不思議な陶酔感に浸ることができた。

後半のベートーベンのピアノソナタもバッハの「平均律」の後に聴くとバッハから与えられた書法を
元にして内生的に且つ雄大に展開されて実に心に残る演奏だった。

アンコールはバッハ(たぶん)の小品とストラヴィンスキーのペトルーシュカからの冒頭部。
最後はなんとグルダの「アリア」。これも趣味がいいなあと感心した。
終演後、席を立った隣のお客さんは「最後のアリアみたいな曲がもっと聴きたかったなあ」と呟いていたが、
私はそうは思わないな。最後の一曲だけだから良かったのだ。

CDやレコードで名演奏を聴くのもいいが、やはり生の演奏にはかなわない。
自宅の沸かし湯に入浴剤を入れて温泉気分を味わっていたが
久しぶりに本当の温泉に浸かって、少々湯当たりした気分に似ている(笑)
いまだに脳裏にベヒシュタインの残響がしてしょうがない。
次回のツィクルスも楽しみだ。

前奏曲とフーガというテーマで上手く選曲されていい演奏会だった。
今月26日には同じプログラムで東京公演がある。場所は杉並公会堂。
何より津山よりは観客席が埋まることを信じたい。
(おそらく埋まるだろう…)
by kaikaisei | 2013-01-15 23:32 | 日記
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