私を染付の世界に引き込んだのは明末清初の古染付写しの向付に出会ってからだ。
修行中からも独立後もしばらく随分と作り続けたものだ。
それがいつの間にか作るのを止めてから何年になるだろう。
理由のひとつは、祥瑞の仕事に時間を取られるようになったことがあるだろうし、
「写し」の仕事から離れて「オリジナル」の作品を自分に課すようになったこともある。
そんな中、渋谷のギャラリー炎色野から古染付を作ってみないか?と依頼があった。
9月に桃山陶磁の新作展をグループでやるので、私に「古染付」で参加しないかということであった。
桃山陶磁といえば、志野、織部の他六古窯の土物というイメージが先行する。
確かに日本発注で景徳鎮の民窯で作られたという経緯もあるが、
磁器の古染付も忘れてはならない存在だ。
しかし私にとって古染付は桃山陶磁としての魅力というより、
形や絵付けの面白さや大らかさに惹かれて製作していたように思う。
棚の奥から石膏型を引っぱり出して、積もった埃を払う。
しばらく私の仕事の原点である古染付の仕事に久々に取り組むことにしよう。
今度は桃山の時代に思いを馳せながら…。
以前とはまた違った物が出来るといいが。